客席に飛び出せ!3D映画

ハリウッドの3Dブームまた来たみたい。うんざりするなあ。多くの3D立体視映画は、イベントとしては楽しめても、物語を語る手段としては相応しくないと思います。情報量は2Dと同じだし、メガネが必要だし、3Dだから面白くなるわけでもない。びっくりはするだろうけど。

3D映画も、元々3D撮影されたものと、2Dで撮影して3D化したものがあります。もちろん前者の方がいいに決まってます。後者のように元々2Dで製作した場合、3D化でよりよくなるわけはありません。ブームに便乗した集客目的でしかないです。「アリス・イン・ワンダーランド」(2010)や「タイタン戦い」(2010)がそうです。どちらも2Dで成立しているので、3Dにデッチあげたものをわざわざ高い金払って観る必要はありません。

今後公開される大作シリーズの「バイオハザード4」「シュレック4」「スパイダーマン4」「トランスフォーマ-3」「タイタンの戦い2」「ナルニア3」「ハリー・ポッター8」は話題性というよりも飽きられるのを嫌っての3Dでしょう。でも、3Dで観客動員できるほど甘くはないと思います。2Dで面白くない映画は3Dでも面白くない。2Dで面白いなら2Dでいいんです。映画の作り手は、立体視システムに頼らなくても面白い映画を作るべきなんだけど、スタジオ側は3Dを望みます。3D TVが普及するまでは興行価値があるということなんでしょう。3Dで観たがってる人って市場になるほどいますかね?「コララインとボタンの魔女」(2009)なんて、2Dでよかったのに3D版で観ましたよ。だってそれしかやってないから。「トイ・ストーリー3」(2010)も2Dで観たいです。

3D映画ブームはこれまでも何度かありました。しかし、コストがかかるので定着しませんでした。だって右目用と左目用が必要なので、撮影するのにキャメラが2台でフィルムは倍。現像もプリントも倍のコストがかかります。しかし近年は映画の製作もデジタル化され、立体視のためのハードルが下がりました。2D撮影された映画を3D化する技術もあります。

3D映画って50年の歴史がある割に大して進歩してないですねー。50年前からメガネ着用!3D映画の歴史はメガネの歴史と等しいのです。それでいいんです。3D映画はあくまで見せ物なのです。そもそもがTVの普及で劇場から離れて行った観客を呼び戻すために導入されました。巨大スクリーンや立体音響と同じですが、感動したり考えさせられたりするわけじゃありません。狙いはショック演出です。観客もそれを楽しむために劇場に行くわけです。
肉の蝋人形(1953)3Dで観てよかった映画は「ジョーズ3-D」(1983)や「ファイナル・デッドサーキット 3D」(2009)かなあ。やっぱ飛び出してナンボですよ。ドーンと目の前にきてビックリドッキリが楽しい。ヒッチコックも「ダイヤルMを廻せ!」(1954)を3Dにしたのはビックリ演出のためでしょ。映画というのは昔から奥行きが工夫されてるので、見る側もそれを認識しています。でも、飛び出す方は立体視のシステムでないと無理ですもんね。劇場映画でないけどUSJの「T2:3D」なんかガンガン飛び出してきます!

R.ロドリゲスが、子供達に立体映画の楽しさを味わってもらいたくて作ったのが「スパイキッズ3-D」(2003)です。デジタル製作なので、昔のように莫大な費用もかかっていません。しかも飛び出してくる楽しさが存分に味わえるように演出されてました。

あと、密室シーンも3Dに向いてます。J.キャメロンの「タイタニックの秘密」(2003)はIMAX 3Dで観たせいもあるかもしれませんが、潜水艇の密室空間がリアルに感じられました。同じキャメロンの「アバター」(2009)も、室内のような狭い空間や、森林のような込み入った空間は効果がありました。と言っても2Dで十分ですが。

但しIMAX 3Dは究極の見せ物なので、事情が違います。日本にまだ本格的なIMAXシアターがあった頃「ポーラー・エクスプレス」(2004)や「スーパーマン・リターンズ」(2006)をIMAX 3Dで観ましたが、圧倒的な迫力とリアリティを味わえました。「アバター」はIMAXデジタル(AMPX)とXpanDとで観ましたが、2Dでよかった。というか、やはりIMAXで観たかったですねー。IMAXデジタルシアターのスクリーンが小さくて臨場感が全然不足。中景~遠景も空間が乏しく、立体的な奥行きが感じられませんでした。IMAXシアター、復活してほしいです。

コンピュータアニメの3D上映は多いですが「ポーラー・エクスプレス」や「ベオウルフ/呪われし勇者」(2007)が圧倒的によかったです。「カールじいさん」(2009)や「ボルト」(2008)より立体視を計算して演出されてました。最先端を行くR.ゼメキスは立体視の演出法を熟知してて、ディズニー/ピクサーよりリードしてますね。飛び出してびっくりさせる目的ではなく、シーンの要素として取り込まれているのでわざとらしくないんですよ。

演出的制約も増えるのでヘタすると映画がつまらなくなります。人は日常的に3Dでモノを見てるので、そのギャップに違和感を覚えます。2D映画であっても奥行きを表現する手法が確立されてるので、空間演出は十分可能です。パースペクティブと空気遠近さえ構図に取り入れてれば十分です。立体視のシステムでイメージ操作しなくても、観る側の想像力でちゃんと補完できるものなんです。

3Dの立体視でもスクリーンに映る限りは1秒あたりの情報量が増えるわけではありません。1秒24コマ、これは2Dと同じです。しかし、かつてダグラス・トランブルが開発したショースキャンというシステムがありました。70ミリのフィルムで1秒60コマ、1秒あたりの情報量は膨大で、人間の脳がストレスを感じない限界だそうです。IMAX 3Dを上回るリアリティでした。トランブル自ら監督した「ブレイン・ストーム」(1983)は元々ショースキャン用に企画された映画でしたが、当時の状況から通常の映画として公開されました。しかし、つくば万博でショースキャン映画を観ることができました。東芝ショースキャンシアターで上映された「Let's Go !パル」(1985)という17分の映画です。トランブルが監督した少年とロボットのお話でした。その映像はスクリーンに投影された映画とは思えないほどのリアリティでした。まるでライブを観ているような感覚で、気分が悪くなる観客もいました。1秒あたりの情報量は2D/3D映画の2.5倍ですから、映画の革命でした。しかし製作コストも上映コストも莫大なので、ビジネスにならず消えてしまいました。フルデジタルな今こそ復活してほしいフォーマットです。

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深谷暎作

Author:深谷暎作
A.e.Suck、アクションスター。撮影で無茶して瀕死の重傷を負う。だが、NASAのメディカルスタッフによって人体改造手術、Flashアニメーターとなる。その費用600万ドル。左目はズームツール、右腕はコンテを切り、アニメーションを描くアトミックパワー、そして24FPSで突っ走る超能力の男!

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